環境衛生ユニット

テーマ:

震災後の「都市機能の早期回復」を目的にした緊急対応に関する提言
ー 廃棄物処理」及び「水道」に着目した調査研究と有効な応急策の検討 -

ユニット長:荒井 康裕 准教授

所属:

都市環境科学研究科 都市環境科学専攻 都市基盤環境学域

H25年度研究進捗報告

 本ユニットでは、「震災廃棄物」と「大規模火災」に関する2つの研究テーマに取り組んでいる。震災廃棄物に関する研究では、基礎となる情報等の収集・整理を終え、がれき処理の輸送計画モデルの構築に向けた準備段階である。一方、大規模火災をテーマにした研究では、貯水槽等の箇所や容量を調査するとともに、木造・非木造の建物情報や、火災の発生する建物棟数などを町丁目別に整理し、それらの情報を水道GISに整備しているところである。

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(1)震災廃棄物

1)震災廃棄物発生量の推定

a.町丁目データの収集、震災廃棄物発生量の推定
 東京湾北部地震における東京都23区を対象に、ゆれ・焼失による震災廃棄物を町丁目別に推定した(想定時期及び時刻:最も火災が発生すると考えられる「冬の18時」を仮定)。町丁目別に算定した震災廃棄物量を区ごとに集計した上で、各区の公園や空地などを仮置場候補地とした場合、がれき発生と保管スペースのミスマッチが生じるのか否か等について分析した。以上の研究成果を昨年の9月に土木学会にて口頭発表1した。

b.品目別の震災廃棄物量の推定
 震災廃棄物の適正処理やリサイクル化の観点より、品目別の震災廃棄物量の算定を試みた。対象とする品目は、コンクリートがら、木くず、金属くず、その他(可燃)、その他(不燃)の5品目であり、発生した震災がれきに対する「質」を考慮した検討が可能になった。

 

2)仮置場に関する検討

a.仮置場における受入れ重量の算定
 仮置場の候補となる公園等のスペースを前述の5品目別に配分し、各品目が占める面積を重量へと変換した。これにより、震災廃棄物に対する各公園の受入れ可能な重量が明らかになった。

b.仮設住宅スペースを考慮に入れた仮置場面積の検討
 実際に震災が発生した場合、公園等のオープンスペースは仮設住宅の建設予定地として使用されることが想定されるため、震災発生時に仮設住宅が必要となる世帯数とその面積の算定を行い、仮設住宅分を差し引いた場合の仮置場面積を検討した。

 

(2)大規模火災 〜大規模火災に対する水道分野の果たす役割について〜

 震災廃棄物に関する研究と並行し、木密地域で問題視されている大規模火災をテーマにした研究も展開した。火災発生時の初期消火に活用される応急給水槽に着目し、この応急水給槽が各区にどれだけ設置されているか等、GISを援用した可視化に取り組んでいる。さらに、上述1-1(1)で推定した「焼失」に関する情報を利用することで、火災リスクとの関係も把握することができる。

 

※1: 池田有斗、荒井康裕、小泉明:震災廃棄物の仮置場に関する必要面積と利用可能面積の比較分析、土木学会第68回年次学術講演会講演概要集、pp.195-196、2013

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調査研究内容:

  1. 研究のねらい
    本研究では、3.11の「津波」と「放射能汚染」に対し、首都直下型震災では「コンクリート構造物由来の震災廃棄物」と「木造住宅密集地域の大規模火災」が中心的な対応課題になると想定し、都市機能をできるだけ速やかに回復するために優先すべき緊急対応について、衛生工学(Sanitary Engineering)の観点から「廃棄物処理」と「水道」の2つを取り上げる。→東京都「環境局/水道局」との連携強化を視野に入れたテーマ設定。
    *…「『2020年の東京』実行プログラム2012」の【目標1(施策2)】に関連する内容。
  2. コンクリート系の震災廃棄物に対する備え/廃棄物処理分野の果たす役割
    迅速な復旧に欠かせないのが「がれき処理」である。都内の建造物の集積度の高さを考えると、発生する震災廃棄物量は膨大であり、がれきを一時保管する場所となる公園・駐車場等の「仮置き場」は十分に確保できるのか、撤去後の処理の在り方は如何にすべきか等、事前に検討しておくべき課題は多い。 本研究では、震災廃棄物の内「コンクリートがら」に焦点を当て、その静脈物流と再生利用に関する調査研究を試みる。【Phase-1】オンサイトで、かつ手軽な対応方法(発災直後から開始し、本格的な処理が稼働するまでの数週間/数か月の範囲)として、「1次保管場所における分別・破砕後、がれきを材料にした道路舗装用ブロックへの暫定活用」や、【Phase-2】既存の産廃処理ルートを活用する本格的な資源循環方法(発災後、2~3か月経過時点から3年以内)として、「1次仮置場から再資源化施設に運搬し、リサイクルセメントを製造している既存の産廃処理施設での本格リサイクル(セメント原材料化)」等、発災直後からがれき処理の完了までの時間的フェイズに沿って「要素技術」と「それらをどのように活用するか」の「ハードとソフト(土木材料工学とシステム計画学)」の両面から検討する。なお、「一廃/産廃」の廃掃法上の取り扱い、広域輸送の事前協定等の問題については、社会科学系ユニットと共有化して取り組むことも考えられる。
  3. 大規模火災に対する備え/水道分野の果たす役割
    都では「木密地域不燃化10年プロジェクト」として、震災時に特に甚大な被害が想定される木造住宅が密集する地域(木密)約7,000haを10年間で「燃え広がらない・燃えないまち」にする。具体的には、市街地の不燃化(不燃化特区)や、火災の燃え広がりを防ぐ道路の整備(特定整備路線、28区間/延長約26km)などに取り組む。 また、東京都水道局と東京消防庁は2012年6月7日、迅速な初期消火活動の充実を図るため、特別区内の排水栓を初期消火活動に活用することを目的とした「上水道における排水栓の取扱い等に関する覚書」を既に締結している。これにより、木密に多くあり、消防車両が進入することができない狭隘道路でも、排水栓を消火用水源として使用することができるようになり、地域防災力が強化されることになった。 東京都が発表する被害想定では、「火災」の発生についても取り上げられている。こうした試算結果を水道分野における震災対策研究に活用すると、例えば、応急給水槽(http://www.waterworks.metro.tokyo.jp/customer/life/s_kyoten.html)は、人々が「飲料水」として活用することを前提に整備が進められているが、火事が起きた時は「消防活動」の目的にもこれらの給水槽から水を使うことになる(http://www.city.kobe.lg.jp/ safety/prevention/water/11.html)。首都直下型の大きな地震では、1軒2軒の火事では済まず、かなりの広範囲に及ぶ火災被害も十分に想定される。木造住宅が密集する場所では火災のリスクが高いが、それらのエリアには、応急給水槽が十分にあるのか。消火活動に要するどれくらいの水量が必要なのか。災害発生後3日間の飲料水が確保されている応急給水槽の貯水量は、消火活動にどれくらい消費されるのか。
    本研究では、「飲料水」として期待されていた水量が「消火活動」に用いられる可能性等、「大規模な火災」の発生に伴って水道分野(配水池、応急給水槽)が受ける影響の有無や大きさについて検討して行きたい。具体的な研究活動として、まず、水道局の震災対策の全般(例えば、「水道管路の耐震継手化緊急10ヵ年事業」等)についてヒアリングを行いながら、実際の消防活動における水道局と消防機関/防災市民組織との取り決め等についても調査する。その上で、火災発生リスクが高い地区とそうでない地区、備蓄水量が十分な地区と不十分な地区、双方のミスマッチが生じる地区等について分析を進める。

メンバー:

  • 荒井 康裕 准教授
  • 上野  敦 准教授
  • 石倉 智樹 准教授

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